誰でもがネットで発信することができる時代だ。なぜそれが重要か、知り合いのお二人を比較してみようと思う。

Noro1532009-04-07


私は横浜で飲食店を経営している(とても古いバー)。毎日興味深い人達と会えてとてもラッキーだと感じている。

今日のテーマの例として取り上げたい方は、横浜の某大学院の数学博士。1年前ぐらいから、月に2〜3回ほど同僚や弟子達を連れて現れる。その先生も同僚も弟子たちも「数学者」というイメージからはほど遠いとても興味深く楽しい人達だ。で、一ヶ月ほど前初めて連れてこられた方から名刺を頂いた(常連の先生もその時に初めて名刺をくれた)。

早速初めて会った「数学博士」のサイトを観て感激した。「こういう人が日本にもいるのだ!」というぐらいの思いだった。私は高校生のころに一番尊敬する人物は数学者で哲学者の「バートランド・ラッセル」だった。数学的思考を持った人達の人生観や社会観はとても面白いし、勉強になると思っている。

この自分でサイトを作っている「数学博士」も同じようにとても面白く、尊敬できる先生だということが彼のサイトを観てわかった。
この方は根上生也先生だ。サイト自体は多分昔、ご自身で「タグ打」されたのだろうし、本当はフラッシュなんかを使いもっとカッコイイデザインをされた方がファンを増やせるだろうと思うが「発信している」だけで良いのだ。

根上先生は数学だけではなく、小説も書くし社会全般や世界に興味を持った先生だということがわかった。

ここに根上先生が高校生のころに書いた童話を引用させてもらう。

リンゴと芋虫
 芋虫はいつもリンゴを食べて暮らしていました.1つ食べ終われば,次のリンゴを求めて,リンゴの木の上をはい回ります.

 ところが,ある朝のこと,リンゴの中から顔を出した芋虫は,あたりを見回して,びっくり.昨日の嵐に吹き飛ばされたのでしょう.芋虫が宿にしていたリンゴは,池の真ん中に,ぽっかりと浮いているではありませんか.

 どうしたものでしょう.いつもなら,朝食のためにリンゴをひとかじりするところですが,はたして,リンゴを食べてよいのでしょうか?

 泳ぐことのできない芋虫がこの池の真ん中で溺れないでいられるのも,このリンゴのおかげです.となると,リンゴを食べてしまうわけにはいかない.かといって,リンゴを食べないと,飢え死にしてしまう.

 まあ,いいや.自分にできることは,リンゴを食べることしかないのだから,リンゴを食べることにしよう.ひょんなことから,池の真ん中に連れてこられたのだから,気長に構えていれば,またひょんなことで助かるかもしれない.

 というわけで,芋虫はリンゴを食べることにしました.でも,食欲に任せてリンゴをかじってしまうと,リンゴの形がいびつになって,バランスを失い,回転してしまいます.その勢いで振り落とされては大変.ここは慎重にリンゴをかじっていくことにしよう.

 そうこうしているうちに,芋虫はうまいリンゴのかじり方を発見します.リンゴの中をえぐるようにかじっていくと,リンゴがお椀の船のような形になって,安定します.これなら,安心して,何日か過ごせそうです.

 そして,数日が経ちました.ついに,リンゴの中身はすべて食べ尽くし,皮だけが残っています.もうひとかみすれば,船底に穴があいて,ぶくぶくぶく.

 とうとう食べるものもなくなり,芋虫は動かなくなってしまいました.

 それから2週間が過ぎました.すると,池の方から,1匹の蝶が飛んできました.めでたし,めでたし.

この童話で根上先生が言いたいことは「今の自分に解決不可能な問題でも,自分が変わることで,解決可能になる」 のだそうだ。
根上先生は小説も沢山書いている。PDFでダウンロードできるので読んでみたい。

変わって、常連の数学博士、今野先生。この先生も根上先生に劣らず素晴らしい方なのだが「ネット発信」していない。ネット検索すると沢山出てくるが、すべて数学の難しい論文や学会、出版した数学書ばかり。実際に会って話している物には、この先生がどうしてこれほど弟子たちや同僚たちに慕われているか分かるが・・・本当にもったいないと思う。


写真の向かって右から二人目が根上先生、一番左が今野先生。



※私が自分の店の情報を発信しないのは、それなりに理由があるから・・・あえて発信したくないからだ。